オルゴールとの出会いをあなたに

第一章:オルゴールの歴史

時計・鐘・オルゴール
一見接点のなさそうな3つの単語が並んでいますが、オルゴールの歴史を紐解いていくと、実はこの3つの道具は、発明と着想・技術進化の過程で密接に関わっていました。

この章では、オルゴール誕生までの経緯から現在に至るまでの流れをざっくりご説明したいと思います。どうぞお付き合いくださいませ。
太古の人たちの時間の概念
コンコルド広場のオベリスク(日時計)


太古の人たちは、太陽の位置で時刻把握していたと言われています。暗くなれば寝て、明るくなれば起きる自然にあわせた健康的なサイクルで生活していたようです。やがて、文明が発展していくにつれ、人々の間で約束事やルールが作られていきます。

例えば、現代に生きる私たちは約束や契約を交わす時、必ず時間や期限を伝えます。そう考えると「時間」を明確に伝えられないこの時代は、おおらかでありながらも不便だったのではないかと想像できます。

過去の文献を調べてみると、紀元前5000年頃、エジプトではすでに日時計が使われていたようです。日時計は太陽の動きによって、位置が変わる影を観察しておおよその時間を知る時計です。日時計は、太陽が遮られる雨の日や夜間は利用できませんでした。

紀元前3400年頃には、ポリネシア・ミクロネシアの航海士により、特定の星や星座の軌道と水平線の高さを手がかりに、船位測定を行う「スターナビゲーション」と呼ばれる伝統航海術が出来上がっていたと言われています。位置や距離を測定出来る計算方法ですが、時間は、目安程度に考えられていたようです。

また、水や砂の流れる速度や、火・ロウソク・オイルなどの安定して燃焼する自然の力を利用して一定の時間を計っていたようです。

日本に残る最古の文献「日本書紀」には、飛鳥時代671年6月10日に、後の天智天皇「中大兄皇子」が漏刻(水時計)を作られたと記載されています。しかし、660年に漏刻を作ったと書かれている文献もあり、真相は分かっておりません。日本最古の漏刻は明日香村で発見され、その原寸大復元模型は、奈良県明日香資料館に展示されています。

江戸時代初期になると、1日を2つにわけて、夜明けを昼、日暮れを夜とし、それぞれ6等分にしその長さを一刻(いっとき)と呼ぶ不定時法が主流だったようです。当時の時計はたいへん高価で、一般庶民に手が届くものではありませんでした。そこでお城やお寺では、人々に時刻を知らせるために「時の鐘」を鳴らしていたそうです。

また、遊郭では線香を炊いて時間を計り、その本数で代金を勘定していたのだそうです。「玉代」「花代」の他に「線香代」と呼ばれる所以は、その頃の名残だと言われています。
現代では、物理学者であり芸術家でもあるBernard Gitton(ベルナール・ジトン)のサイフォン効果を利用した水時計が、兵庫県JR加古川駅や愛知県地下鉄矢場町駅前に設置されています。精度もよく芸術性にも優れていて、モニュメントとしても人気のスポットになっています。
博学者たちの足跡
当時の博学者は天文学や物理、技師や医師など様々な職業を兼任する事が多かったそうです。星や太陽の位置から時の経過を数値化し、時計にするまでの一連の流れと共に様々な知識や技術を習得する必要があったのでしょう。 さて、世界の時計に関する文献を調べてみる事にしましょう。

1092年、唐の密教僧であり天文学者蘇頌(ソショウ)の一行と役人リャンリンザンにより天文道具を時計に応用した水運儀象台が作られます。

1206年、ジズレ(現在のトルコ)のアル・ジャザリーにより歯車とおもりを組み込んだ水時計が作られます。また、その技術を応用して、オートマタの制作にも取り組みます。当時画期的だったアル・ジャザリーの発明に、ガリレオは興味津々だったと言われています。

また、イタリアでは、医師・天文学者・時計技師であるジョバンニ・デ・ドンディが歯車を使ったアストラリウム(天文時計)を16年かけて作り、1364年に論文にまとめました。

Luigi Pippaが再建したアストラリウム


1583年、イタリアのガリレオ・ガリレイが振り子の等時性原理を発見し、それを元にオランダのホイヘンスが振り子時計を作りました。

ホイヘンスの振子時計


続けて、巻きひげぜんまいとてん輪を組み合わせた、てんぷぜんまいに脱進機を取り付けた時計を作ります。

ホイヘンスのてんぷぜんまい


天文学や物理学によって発見された法則を、技術に応用したこの時代は、時計の精度が飛躍した時代とも言えるでしょう。
人々に時を告げる鐘楼
ブルージュの鐘楼


中世のヨーロッパでは、教会の鐘楼の鐘の音が、毎日朝と夕方と夜の3回響いておりました。その音で人々は時刻を知る事が出来ました。

鐘楼には2種類あり、1つの鐘が鳴る場合をベル、複数の鐘が旋律を奏でる鐘は、カリヨンと呼ばれるようになりました。カリヨンはラテン語で「四個で1組」という意味だそうです。
15世紀のパリを舞台に書かれたヴィクトル・ユーゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」はミュージカルやバレエ、オペラでも公演されている有名なお話です。ディズニーのアニメ映画にもなり「ノートルダムの鐘」と邦題がついています。主役のカジモドはノートルダム大聖堂で大きな鐘を鳴らすのが仕事でした。電気がなかった頃のヨーロッパの人々の暮らしを今に語り継ぐ物語の一つです。
カリヨン動力部の進化
バトン式カリヨン演奏の様子


さらに、カリヨンは美しい旋律を奏でるために、鐘の数を増やしていきます。

鐘の数が増えるとともに、動力部に手と足用の鍵盤がついたバトン式カリヨンが誕生しました。バトン式カリヨンはオルガンに似ていますが、鍵盤をこぶしで叩くように演奏するのでとても迫力のある演奏になります。

当時の鐘楼は、特に決まった規格がなく、それぞれオリジナルで作られたもので、音楽の知識とカリヨン演奏のスキルのある人にしか演奏する事が出来ませんでした。

ドラム式カリヨン


そこで、機械仕掛けの自動演奏装置が開発されます。巨大なドラムを回転させて、自動で複雑な旋律を奏でるドラム式カリヨンの誕生です。

世界最古の自動演奏装置がついたカリヨンは、1380年ベルギーのブリュッセル、聖ニコラス教会の鐘楼だと言われています。しかし、この鐘楼は1695年のフランスのブリュッセル砲撃により全焼してしまい、残念ながら現代に残っておりません。

ベルギーとフランスには世界遺産に登録された鐘楼群があり、今も見学する事が出来ます。中でも、マルクト広場にあるブルージュの鐘楼には47個の鐘で構成されたカリヨンが設置され、その音色は世界的に有名です。

ドラム式カリヨンがある鐘楼内も見学可能でオルゴールファンの人気スポットの1つになっています。ベルギーを訪れる機会があればぜひ立ち寄ってみて下さい。
時計職人たちの決断
アドルフ・ノーザン作 / ナポレオンのモスクワからの退却


1812年、ナポレオンのロシア遠征に続き解放戦争が起こり、フランスは混乱の時を迎えます。フランスの時計職人達は戦火を逃れ、フランス国境に近いスイスに移り住みます。時計職人のアントア・ファーブルが、スイスのジュネーブ科学協会に書類を提出したのもあって、オルゴールを最初に作った国という栄誉はスイスのものとなりました。

アントア・ファーブル作 / Musical Fob Seal


現在のサン・クロワには、かつての有名オルゴールメーカーパイヤール社の跡地に博物館ミュゼ・シーマ(Musée CIMA)、その隣にサン・クロワ美術館(Musée Sainte-Croix)が並んでいます。郊外にはミュゼ・ボー(Musée baud)があり、サン・クロワで作られたオルゴールやオートマタなどが展示されています。また高級オルゴールの老舗 リュージュ社ではオルゴールやシンギングバードの製造が行われており、今もオルゴール発祥の地として世界的に知られています。
1796年、スイスの時計職人アントア・ファーブルの手により作られた、世界最古のオルゴールは京都嵐山のオルゴール博物館に展示されています。
嵐山オルゴール博物館
〒616-8375 京都市右京区嵯峨天龍寺立石町1-38 TEL:075-865-1020
オルゴール全盛期到来
音楽を楽しむには生演奏を聞くしかなかったこの時代、オルゴールは唯一のオーディオ装置として全盛期を迎える事になります。

日本ではあまり馴染みがないものですが、自動演奏装置として独立したオルゴール「ミュージカル・フォブ(Musical Fob Seal)」も貴族の間で大流行しました。ベストやズボンについた小さなポケットをフォブと呼び、貴族たちは家紋やきらびやかな装飾が刻まれた小さな印章や懐中時計を、常にポケットに入れて持ち歩いていたのだそうです。

インターチェンジャブル・シリンダー・オルゴール


また、自宅で音楽が聴けるとあって、家具や調度品としてもオルゴールは人気となります。1862年にはパイヤール社によって、シリンダーを交換できるインターチェンジャブル・シリンダー・オルゴールが登場します。

市民革命を経たヨーロッパでは、貴族の間だけで許されていた音楽が、一般市民にも広がりを見せ、オルゴールはさらに人気を高めていきます。

家具調ディスクオルゴール


1885年ドイツで、ディスクオルゴールが発明されます。円盤状のディスクは取り換えが簡単で、シリンダーよりも安価で製造できて、瞬く間に世界中に普及していきました。
現代におけるオルゴール
1877年、エジソンが蓄音機を発明し、その後、エジソンの特許を避けて、エミール・ベルリナーによりレコード蓄音機が開発・販売され爆発的な人気が出ます。このタイミングによりオルゴールは短い全盛期を終える事になりますが、第二次世界大戦後、世界的に再ブレイクし今に至ります。

電力の普及や家電の進化に伴い、レコードやテープ、MD・CDなどが登場し、大量生産・大量消費される中で、オルゴールは調度品やギフトとしてのニーズを確立しています。
オルゴール音色の不思議
音をデジタル化する事により、人間の耳にあわせて音をカスタマイズ出来るようになりましたが、その反面、可聴域以外の周波数がカットされてしまうデメリットも持ち合わせています。

最近の研究では、人の可聴域を超える音の周波数が、人体に良い影響を与える事が分かっています。オルゴールを聞くと脳内にα波が発生し、自律神経の安定、集中力、リラックス、癒しなどの効果が表れ、ハイパーソニック・エフェクトと呼ばれます。

耳に聞こえない音なのに、なぜそのような効果が起きるのかは、今はまだ解明されておりません。今後様々な分野の博識者によって、音の持つ効果について研究されていく事になるでしょう。

ハイパーソニックエフェクトについては別の章で解説して参ります。
あとがき
現代において、全く用途の違う道具として認識されている、時計・鐘・オルゴール。

長い歴史の中で、その時代を生きる人たちの生活にあわせて、ライジングとイノベーションを繰り返し、その進化の過程で時計・鐘・オルゴールに共通点があったのです。

オルゴールは、差別、貧困、疫病、戦争や革命が起こっていた中世のヨーロッパで、人々の心を慰め、豊かにし癒し続けてきました。

ストレス社会と言われるこの時代においても、その役目に変わりありません。静かにオルゴールの音色に耳を傾ける時間を見つけてみてはいかがでしょう。

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