オルゴールとの出会いをあなたに
第三章:オルゴールが出来るまで
第三章:オルゴールが出来るまで
オルゴールのニーズと用途
古き良き時代に誕生したオルゴールは今も世界中で愛されています。出産祝い・プロポーズ・音楽のプレゼント・お土産・記念品などギフトとして、音楽の分野では作曲、オルゴールメカを入れるボックスは木工やからくりなどの技術・工芸、理科や科学の分野では音響や電子機器との組み合わせ等でニーズがあります。また、コレクターの間では、アンティークのみならず、新作や特注品も人気です。世界中の文化が盛り込まれた工芸品として、オルゴールが採用されているものも多いのです。
さらには、基礎研究が進み、オルゴールが奏でる音成分が脳波や人体に影響を与える事が明らかになり、ハイパーソニックエフェクトと名付けられました。そんなハイパーソニックエフェクトの効果からオルゴールが再注目され、病院や施設などに設置されているのを見かけるようになりました。
オルゴールの作曲・編曲のコツ
オルゴールの作曲・編曲には、構造上の制約があり、音を間引いたり、付け足したりする、シンプルでありながら独特のコツが必要になります。
シリンダーゼンマイ式オルゴールの場合、18弁は約15秒、23弁・30弁は約30秒ほどの楽曲を入れる事が出来ます。演奏時間は18弁の場合は約3分、20弁・30弁は約4~5分間。ゼンマイの動力が切れるまで繰り返され、徐々にゆっくりになります。
既存曲の多くは、イントロ(導入部)、Aメロ(メロディパターン)、サビ(クライマックスメロディパターン)、アウトロ(エンディング)を組み合わせて作られてます。メロディパターンがいくつかある場合、Aメロ、Bメロとアルファベットを冒頭につけて呼ばれます。多くの場合、楽曲の最も印象的な部分で作る場合が多いようです。また使える音の数や長さにも制約があります。基本的にダイアトニックスケール(全音階)を使い作曲を行います。
オルゴールの櫛歯は一枚の金属板で繋がっているので、隣接する櫛歯を同時に弾くと音が濁ってしまいます。そのため、基本は主要三和音、アルペジオ(分散和音の一種)がよく使われています。また、櫛歯がはじかれ振動を続けているところに、次のピンが触れるとダンパーノイズと呼ばれる雑音が混じってしまいます。そこで、ピンは櫛歯をはじく前にダンパーを押し上げ、ピンが触れる前に振動を止める構造になっています。そんな理由もあって、4分音符よりも短い音、同じ音を連続で鳴らす楽曲はオルゴールには不向きと言えます。
しかし、楽曲によってはオルゴールにない音を表現しなければならない場合もあります。ない音とは#や♭がついた半音、ピアノで言う黒鍵盤の音なのですが、これを隣接する全音で代用すると、かなり違和感が出てきます。そういう場合は1オクターブ変えたり、アルペジオを利用して、耳をごまかすテクニックを使います。
ご自身で作られた楽曲をオルゴールにしたい方は、オルゴール専門の編曲家もいますので、是非AND HEARTまでお問い合わせくださいませ。
また、サンキョーのオルガニート、ゼンオンのメロニカなど、専用の譜面を通す事で、オルゴールを奏でる手回しオルゴールは、自分で作曲して曲を奏でる事が出来ます。カードを繋げると長い楽曲でも演奏する事も出来て、学習教材としても人気のアイテムです。
オルゴールメカの製造工程
1.編曲
編曲者は、原曲をオルゴールのシリンダーのサイズにあわせて編曲を行います。この工程には音楽にも技術にも精通している必要があります。
2.針打ち
編曲に合わせて、シリンダーに小さな穴を開け、細い鋼線(ピン)を穴に挿入し切削します。
3.シリンダー検査
ピンがまっすぐで不足していないか、ルーペを使い入念に注意深く検査されます。
4.ガム引き
4.シリンダーの内側一面に樹脂を塗布します。こうして、すべてのピンが固定され、最高の音質が保証されます。
5.打ち抜き
コーム、速度制御機構、ゼンマイハウスの主要部品を作ります。鋼鉄製と真鍮製の板から金型を使用し打ち抜かれます。
6.切断
オルゴールの音を奏でるコームは、リュージュ社オリジナルのフライスカッターで、鋼鉄製の板を櫛の形に切り抜いてつくられます。
7.焼入れ
800℃を越える釜で焼入れを行い、硬度を高めます。
8.溶接
コームの低音域に属する櫛歯の下には鉛を流し込みます。丸みのある澄んだ音色を放つよう職人が1本1本研磨します。
9.調律
オルゴールのコームは、ピアノと同じように調律する必要があります。職人はまず振動数を確認し、1本1本研磨して正しい音階に調律します。
ダンパー
10.ルーペとピンセットを使用し、低音域の櫛歯の下にダンパーを貼り付けます。余分な振動を抑え、澄みきった音色を可能にします。
11.取り付け
職人は、長年の培われた経験と音感だけを頼りに音色を創り上げます。ピンとコームのバランスは、音色を左右する最もデリケートな作業です。
12.組み立て
オルゴールの組み立ては、すべて手作業で行われます。様々な部品が組み合わされ、心地よいテンポの美しい音色が奏でられるのです。
いろいろなオルゴール
歴史上では、貴族や富裕層が顧客だった事もあり、ベーシックなオルゴールは象嵌や螺鈿が施されたオールドスタイルが主流です。こちらについては別章で詳しく記載して参ります。
ベビーメリーや子供向けのおもちゃとして、ぬいぐるみや人形に組みこまれた安価で手に入るオルゴールも人気です。
ケースに入った親王飾りには、オルゴールが組みこまれているものがあります。 桃の節句は日本独自の文化で、海外にはこれに該当する記念日はないのだそうです。 世界的には国際連盟により6月1日に定められていますが、日本では、1948年に定められた5月5日の端午の節句があったので、準拠する必要はなかったようです。