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第四章:オートマタと天才技師

伝説の技師 ジャケ・ドロー
ピエール・ジャケ・ドロー


オートマタやシンギングバードを語るには、ずば抜けた才能と技術力を持った伝説の時計技師ピエール・ジャケ・ドローの存在を欠かす事が出来ません。

1721年、ピエール・ジャケ・ドローはスイスのラ・ショー・ド・フォンにある小さな農場に生まれます。 器用で注意深く真面目な性格だったピエール・ジャケ・ドローは、年上の親類などの影響を受け、17歳の頃から時計製作に没頭します。 ジャケ・ドローは次第にムーブメントに音楽機構やオートマタを組み合わせた時計を作り、裕福な顧客たちの注目を集めました。

時計職人として仕事が安定してきた1750年、ジャケ・ドロー29歳の時にマリアンヌ・サンドと結婚します。 翌年には娘ジュリーが、さらに翌年には息子アンリ・ルイが誕生しますが、 1755年に妻と生まれたばかりの2番目の娘が相次いでこの世を去ってしまいます。 その後、ジャケ・ドローは再婚せず、時計製作の仕事に打ち込みました。

ジャケ・ドローが31歳の時に、嗅ぎたばこ入れに納められたシンギングバードを作り、 当時、自然主義で啓蒙思想を持った王侯貴族たちに受け入れられます。

ピエール・ジャケ・ドロー作シンギングバードボックス


1758年、ヌーシャテル州知事ミロール・マレシャル知事の勧めがあり、 スイスから時間をかけて馬車でスペインへと向かいます。 運んでいった6つの作品は全て、マドリッド王宮やビリャビシオサ・デ・オドン城に購入されました。

ジャケ・ドローは、スペインで得た資金を元に、懐中時計や置時計、そしてオートマタの制作により一層没頭するようになります。

3体のオートマタ ヨーロッパで巡回展
息子アンリ・ルイと、養子として迎えたジャン・フレデリック・レショーも制作に加わり、ジャケ・ドロー&レショー社を設立します。 1773年にジャケ・ドロー&レショー社はより完璧で精緻なオートマタを作りはじめ、翌年の1774年に、地元スイスのラ・ショー・ド・フォンで3体のオートマタを発表します。

さらに翌年の1775年から1781年にかけてヨーロッパ中で巡回展を行い、世界中の愛好家を虜にし、ジャケ・ドローの名声を広めました。

絵を描くオートマタ/ドロワー(1773年製造)
CC BY-SA 2.0 fr/Rama

ピアノを奏でるオートマタ/音楽家
CC BY-SA 2.0 fr/Rama

文字を書くオートマタ/ライター
CC BY-SA 2.0 fr/Rama


巡回展で公開された3体のオートマタは、現在、 スイス、ヌーシャテル美術・歴史美術館に展示されています。
シンギングバードとは
シンギングバード


シンギングバードはオルゴールと違い、ヤギの革で作られたふいごが空気を送り出し、結び付けられた笛が鳥の鳴き声を奏でる仕組みになっています。実は笛は1本しか入っておらず、ピストンでトロンボーンのように音に高低差をつけ、鳥の鳴き声を再現しています。 鳥の羽根は一枚一枚丁寧に職人が植え付けているため、1日に2羽しか作れない、大変手の込んだ作品です。

リュージュ社 シンギングバード Byzance

ジャケ・ドローのシンギングバード製造技術はリュージュ社に受け継がれ、現在はふいごと鳥の羽根の装飾スキルとセンスを持つ職人の育成に力を入れています。
オートマタ作家 フランソワ・ジュノー



現代においてもオートマタの製造を行うアーティストがいます。

1959年、フランスとの国境から、そう離れていないスイス サンクロワで、フランソワ・ジュノーさんは、精密機械の製作に携わる一族の4代目として生まれました。 エコールテクニックでマイクロメカニックを学んだ後、オートマトン復元技術士をしながら、パリ国立高等美術学校エコール・デ・ボザールで、ドローイングと彫刻を学びます。

1984年、サンクロワに戻った後、ジャケ・ドローが開発したオートマタを伝統的技術で数年かけて作り上げました。

フランソワ・ジュノー作/オートマタ


フランソワ・ジュノーさんはその後、ローザンヌの連邦工科大学(EPFL)やスイス電子工学マイクロテクノロジーセンター(CSEM)などとコラボレーションを行い、これまで伝統的な技術で製造が不可能だったものを、3Dプリントで作るようになりました。

2020年、ユネスコは、ジュラ地方で活動するスイスとフランス両国の機械式時計職人の技能を無形文化遺産に登録すると決定しました。これには、時計の他に、機械人形やオルゴール、シンギングバードなども含みます。

伝統的技術と新技術を融合した彼の作品作りは今も続いています。

嵐山オルゴール博物館のコレクション
キド・リュージュコレクションを受け継いだ嵐山オルゴール博物館には、希少なオルゴールやオートマタ、年代物の装飾品や玩具など数多く展示されています。

ディスクオルゴール

シリンダーオルゴール

オルゴールの香水入れ

世界最古のオルゴール


1796年、精密時計技術から派生した、アントア・ファーブル作の世界最古のオルゴールから、 今はなきオルゴールメーカーの特注品や、全て手作りで制作されたフランソワ・ジュノー作オートマタなど、 その時代を象徴する希少価値の高いものばかりです。

フランソワ・ジュノー作オートマタ


嵐山オルゴール博物館のスタッフの皆さんは、歴史・技術・芸術的な観点から説明して下さいます。さらに、その音色を贅沢に奏で、私たちを中世のヨーロッパに誘ってくれます。

アンティークオートマタ / ビスクドール


嵐山オルゴール博物館の1階フロアには、巨大オルゴールゴスラーが展示されています。他にもリュージュ社の新作オルゴールが並び、実際に試聴と購入が可能です。

音楽、造形や装飾、メカの構造など、時代をまたがる叡智が集約したオルゴールの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

嵐山オルゴール博物館
〒616-8375 京都市右京区嵯峨天龍寺立石町1-38 TEL:075-865-1020

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